渡辺浩二設計室 別館 

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コストから逆算したプランニング中編(10/11)

建築主さんの視点から、家づくりがどのように見えて、実際にどのようなことが起きるのか、これまでの事例を基にシミュレートしました。ステップ1から4です。


「あなたは家を新築することになりました」


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【ステップ1】
おおよその予算と要望を設計者に伝えて、一週間後、ラフプランができあがりました。


具体的なスケッチを目にして、このような考え方があるのかと驚かれたり、それならばここはこうしたい、あそこはああしたいと、あなたのイメージと要望は、当初とは異なる視点を加えたものに変化してゆきます。


ご家族での話し合いや設計者との対話を続けるなかで、ラフプランは可能性が絞られ、そのぶんだけ具体性と深みを増して、基本設計案が完成しました。


【ステップ2】
模型で基本設計案を確認すると、その形や質感は、ほぼイメージどおりでした。


これを基に、実際の骨組みや下地、仕上げに至る、その家のすべての要素を書き込んだ実施(じっし)設計がはじまりました。描かれる図面の縮尺もより原寸に近い大きさになり、断面、そして建物すべての表面について、検討と作図が続けられます。


スケッチを目にしてイメージと要望がより具体的になったように、あなたは実施設計図を目にすることで、基本設計案ではイメージできなかった内容、例えば階段下を利用したPCコーナーのカウンター奥行き寸法、あるいはその脇のモデム収納用の棚の目隠しの方法、またはコンセントの差込口や配線を目立たないようにするにはどうすればよいのか、などを考えるようになります。



実施設計中には、そういった議題での打ち合わせが繰り返されます。打ち合わせを繰り返すほどに設計図は精度を上げ、内容を充実させて、やがて設計完了しました。


【ステップ3】
完成した実施設計図をもとにした、実際に工事をおこなう各専門工事業者からの見積書が集まりました。仕上げや仕様の再検討・取捨選択をおこない金額を確認すると、見積の合計額は無事予算内に収まりました。その内容に基づき専門工事業者とそれぞれ請負契約を締結して、さあいよいよ着工です。


地縄張り、地鎮祭、基礎工事、棟上、上棟式を経て、家はそのボリュームを次第にあらわし、外装内装が整うにつれて完成時のイメージに近づいてゆきます。


【ステップ4】
打ち合わせを何度も重ねてデザインや使い勝手を検討したけれど、あらためて現場で見ると下駄箱の位置は変更前の位置がよいと、あなたは思い直しました。



工事管理者に相談したらまだ再変更は可能とのことで、設置工事も無事完了しました。同じように現場での再検討を数箇所おこないながら工事は順調に進み、予定どおりに完成・引渡しを迎えました。
 
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いかがでしたか?


ダイジェスト版でしたが、実際の家づくりもこのように


1:基本設計
2:実施設計
3:見積・工事金額の確定
4:着工〜完成



といった、4つのステップを経て完成します。
そしてそのあいだ、各ステップにおいて建築主さんには


「どの案を採用する(しない)のか?」


という判断・決断を絶えず求められますが、
判断・決断を下すには、


・その内容と、
・コスト


についての情報が不可欠です。



「コストから逆算したプランニング」とは、計画の早い段階から、その内容に応じたコストを示すことにより、予算に対する現在位置をその都度確認(逸れていれば軌道修正)しながら計画を進めてゆく手法です。


坪単価だけでは拾いきれない内容について、金額の見通しをつけながら家づくりを先導するスキルは、計画内容の細分化、個別化が進んだ昨今の家づくりにおいて、私たちつくり手には、必須であろうと考えています。


次回、もう少し詳しい説明を加えて、この話のまとめとします。
 
| 6:プランとコスト | 10:00 | - | - | pookmark |
コストから逆算したプランニング後編(11/11)

「コストから逆算したプランニング」の詳細について書いて、まとめとします。

この記事の初回、  「2010年代の坪単価の効能と限界」でも触れましたが、過去の事例・経験というのは予算作成において強力な援軍となります。過去の事例を細かく読みこんでゆくと、次第に物理的に家が出来上がるための要素、つまり、


・各専門工事業者の人件費
・現場管理者の  〃
・材料費



と、建物の「規模」との比例関係が、それぞれに一定の傾向を伴って見えてきます。


比例関係を工事項目ごとに整理してできあがったデータは、縁側や吹き抜けや小屋裏収納など、従来の坪単価では評価し切れなかったコストを計画初期の段階で掴むことを可能にします。

 


完成した事例は、次の設計で活かされ、やがて完成して、その次の設計に活かされて・・・と、以降は正のスパイラルもたらします。そして、そうして発生する「段取り」のコストは、「段取り不足」により生じる工事中のロス分(=工事費の一部)を下回ります。

 
コスト予測の精度は、天気予報における観測ポイントの絶対数と同じく、蓄積したデータの密度に比例します。つまり、


・建物全表面の意匠図、
・構造図、
・設備図
・仕様書

 


が揃った前提で、


・積算、
・見積集計、
・現場での整合性の確認、
・データ分類と整理、


そのデータを反映した設計をおこない出来上がった、
・建物全表面の意匠図、
・構造図、
  ・
  ・
  ・


といった作業を繰り返すことが必要です。やってみてわかったのですが、このように内容とコストを「押さえ」ながら進めてゆく家づくりに必要な事とは、お読みいただいてきたように、しっかり準備(設計)をおこない、しっかり準備(仕様と金額の確定)をおこなってから現場に臨み、その経験(データ)を次の家づくりに活かすこと、いわゆる、



P(PLAN=設計)
D(DO=現場)
C(CHECK=データ)



のサイクルを着実におこなうことに尽きます。しかし、建築の(あるいは建築以外の)実務者の方からみれば、これらは「そんなのよくわかっている」事ではないでしょうか?おそらく実践への鍵は、その外側と内側に潜んでいるのだと思います。


以上、コストから逆算した家づくりについてのお話は、これにて終了とします。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


データについては良識と守秘義務に反しない範囲で公開しますので、関心をお持ちの方はお声掛けください。

 
| 6:プランとコスト | 09:00 | - | - | pookmark |