渡辺浩二設計室 別館 

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家づくりのあたらしい動き(コストから逆算したプランニング 8/11)

「家づくりのあたらしい動き」と題して、総合建設業者さん、工務店さんが取り組まれている原価公開の動きから見える、これからの家づくりの方向性について私見を述べます。


原価公開とはどのような取り組みなのかというと、これまで総合建設業者さん、工務店さんが「家づくりにかかる費用」としてひと括りにしていた、


・各専門工事業者の工事費(原価)、
・現場管理費、
・自社経費


をそれぞれに分割して公開し、重層構造をなくして情報とお金の流れのロス、滞りを取り去りましょう、といった趣旨のようです。ホームページや情報誌、書籍からの情報に留まって、関係者の方に直接お話を伺ったことはまだないのですが、基本的な考え方は、私たちがおこなっている分離発注方式と同じだなあというのが、率直な感想です。


ネット検索で「家づくり 原価公開」と入力すると、たくさんの記事が出ます。今あらためてgoogleで検索したら11万件ヒットしました。この取り組みについて知らなかった訳ではないのですが、いまから10年ほど前は、全国規模で見ても目立った存在といえば岐阜県の(株)希望社さん一社くらいだったのですが、いまや11万件のヒットです。今回調べてみて、どれほどの社数、団体数で実践されているのか、その実数が把握できないほどの規模であることだけは把握できました。


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パソコン一台、否、最近ではスマートフォン一個あれば、一般的な住宅建設に必要な粗利益率の情報が入手できる状況で、その情報(粗利益率)と見積明細書に載っている諸経費とを比べて、その違いをフィクションと称することにも、100%ではないにせよ頷けます。


しかし、もともとが家づくりを私たち「普通の人」にも可能とするためにうまれた一括請負方式の、良かれとおこなわれていた代行サービスのいわば大人の暗黙の了解の部分、つまり、これまで「言わぬが花」とされていた部分を明るみに出すということは、見方を変えれば見なくてもよかったことがらを直視せざるを得ないともいえるわけで、よい・悪いの単純な二元論で結論が出るものでもないだろうとも思います。


けれどその時代の「標準」の推移のなかの、たとえば医療における告知・インフォームドコンセントなどにみられるような閉じられた専門技術職からの情報公開の流れは、今後促進されることはあってもその逆はないだろうとも思います。単純な比較は危険ですが、アメリカの家づくりでは工事原価+経費の金額提示で、異なった数種類の経費の額によって受けられるサービスも違う、といったやりかたが大多数のようです。


そうした「現在」の世の中において、家という商品(この視点はとても大切です)を手に入れるプロセスのなかで、日常生活とかけ離れた金額の動きや複雑なシステムを直視しなければならない負担は、今やそれを隠すために覆っていた外皮一層ぶんのコストよりもその価値が軽くなってしまった、それ故の原価公開の流れではないのかとも思います。

 
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繰り返しますが、単純な比較は恣意的な誘導を孕みます。しかし、そのことに充分注意を払って慎重に考えを進めても、これからの家づくりがこれまでより内向きに閉じるものではなく、外に向かって開かれたものになるだろうという予想は、私のなかではどうしても覆らないです。


この先の10年、どれほどの変化が、どれほどの速度で進んでゆくのでしょうか。


それでは次回から、これまでお話したことを総合して、「コストから逆算したプランニング」についてご説明します。

 
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