2015.05.08 Friday
長持ちする家
家づくりにおけるアンケート調査で、「高い関心がある」項目の上位ふたつは、
ほとんどの場合、構造と断熱です。
このふたつは、もちろん、安心で快適な住空間には必須ですが、家が建っている間ずっと維持されることが、その前提ともいえます。今回は、その前提を担保するもの、家の耐久性について説明します。
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まずは公による基準、仕様について触れておきます。
日本住宅性能表示基準には、
・耐久性と
・メンテナンスのしやすさ
について、仕様と、仕様に応じた等級が定められています。
これらは長期優良住宅の認定基準のひとつでもあります。
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仕様について、おおまかに言えば、
1:建物への水分、水蒸気のコントロール
2:点検口など、メンテナンスを見越した設計の具体的な指標、
3:耐久性からみた樹種の分類、
の、3つから成り立っています。
1(建物への水分、水蒸気のコントロール)
では、腐朽やサビやカビやシロアリの発生を防ぐよう、水・湿気が過剰に流れたり、留まったりしない工法が定められています。
「夏涼しくて冬暖かい」家(その4/6)で触れましたが、あたためられると上昇する空気の特性をいかした、外壁通気と小屋裏換気の工法は、結果的に漏水防止と除湿の役割も果たしています。
2(点検口など、メンテナンスを見越した設計の具体的な指標)
では、配管と構造体との関係や点検口設置の義務、点検スペースの寸法など、
3(耐久性からみた樹種の分類)
には、湿度の多い地盤面付近に使う木材は、ヒノキやヒバ(または薬剤処理品)などの使用
が定められています。地味であまり目立たないですが、どれも重要です。
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1(水分、水蒸気のコントロール)についての不具合のひとつに「壁体内結露」という現象があります。
流れ込んだ空気が壁の中で冷えて露となって(結露して)留まり、その水分がカビなどを招くことで発生するものですが、結論からいえば、この結露の原因は「不適切な空気の流れ」です。そこに使用される素材自体の違いは直接には関係ありません。
最近でこそ、この種の誤解はだいぶ減ってきた印象ですが、どうぞ誤解なさらぬよう。
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耐久性やメンテナンス性を向上させるための仕様はひととおり揃って、私の知る限り、一般に普及している印象でもあります。
これらは設計、施工時にも一目では判らないほどに、仕様・コストのどちらともに些細な違いでしかないのですが、完成後数十年におおきな違いを生む要因です。
次回は、火災時の安全性について書きます。