渡辺浩二設計室 別館 

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長持ちする家
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家づくりにおけるアンケート調査で、「高い関心がある」項目の上位ふたつは、


ほとんどの場合、構造と断熱です。


このふたつは、もちろん、安心で快適な住空間には必須ですが、家が建っている間ずっと維持されることが、その前提ともいえます。今回は、その前提を担保するもの、家の耐久性について説明します。

 
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まずは公による基準、仕様について触れておきます。


日本住宅性能表示基準には、


・耐久性と
・メンテナンスのしやすさ



について、仕様と、仕様に応じた等級が定められています。


これらは長期優良住宅の認定基準のひとつでもあります。

 
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仕様について、おおまかに言えば、


1:建物への水分、水蒸気のコントロール
2:点検口など、メンテナンスを見越した設計の具体的な指標、
3:耐久性からみた樹種の分類、



の、3つから成り立っています。


1(
建物への水分、水蒸気のコントロール
では、腐朽やサビやカビやシロアリの発生を防ぐよう、水・湿気が過剰に流れたり、留まったりしない工法が定められています。



「夏涼しくて冬暖かい」家(その4/6)で触れましたが、あたためられると上昇する空気の特性をいかした、外壁通気と小屋裏換気の工法は、結果的に漏水防止と除湿の役割も果たしています。


2(
点検口など、メンテナンスを見越した設計の具体的な指標)
は、配管と構造体との関係や点検口設置の義務、点検スペースの寸法など、


3(
耐久性からみた樹種の分類
には、湿度の多い地盤面付近に使う木材は、ヒノキやヒバ(または薬剤処理品)などの使用


が定められています。地味であまり目立たないですが、どれも重要です。


 
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1(水分、水蒸気のコントロール)についての不具合のひとつに「壁体内結露」という現象があります。


流れ込んだ空気が壁の中で冷えて露となって(結露して)留まり、その水分がカビなどを招くことで発生するものですが、結論からいえば、この結露の原因は「不適切な空気の流れ」です。そこに使用される素材自体の違いは直接には関係ありません。


最近でこそ、この種の誤解はだいぶ減ってきた印象ですが、どうぞ誤解なさらぬよう。

 
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耐久性やメンテナンス性を向上させるための仕様はひととおり揃って、私の知る限り、一般に普及している印象でもあります。


これらは設計、施工時にも一目では判らないほどに、仕様・コストのどちらともに些細な違いでしかないのですが、完成後数十年におおきな違いを生む要因です。


次回は、火災時の安全性について書きます。

 
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火災に強い家
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総務省消防庁の資料によると、2011(平成23)年の、建物の年間出火件数は26,795件でした。そのうち住宅の火災は14,973件で、建物火災の6割程を占めています。


出火原因は、


最も多いのが放火、
次がたばこの不始末、
三番目がコンロとなっていて、


1,210人の方が亡くなられています。亡くなられた主な原因は火災発見の遅れによるガス中毒と火傷で、亡くなられた6割強が65歳以上の方です。


こうしたなかで、住宅にできることは何なのか、現在の法令等を整理しながらこの機会に、あらためて考えてみます。

 
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法令などをみると、


都市計画法、
建築基準法、
消防法、
日本住宅性能表示基準に、


住宅の防災に関してそれぞれの規定と基準が定められていますが、


それらは大掴みにいえば、


火災に対して、「より注意をはらわなければならない地域」の指定と、


建物を、



・燃えにくく、
・避難しやすく、
・早期の発見と通報ができて、
・消防活動の妨げとならないようにするための


規定と基準
です。

 
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都市計画法には、


火災が起きたときに、その炎が燃え広がらないように、古くからの木造の建物が密集している地域や中心市街地などを 「火災に対して、より注意をはらわなければならない地域」 として指定するよう定められています。


例えば境港市ならば、境港駅から東に数キロ、米子市ならば米子駅より北に、灘町・角盤町にかけての地域が「準防火地域」として定められています。


この地域の建物は、その他の地域に比べて、より高い防火性能を求められます。


建物についていえば、建築基準法には、


・建物自体の耐火性能、
・隣からの類焼防止と隣への延焼防止、
・火を使う部屋に使用する材料の制限、
・避難時の安全性確保


について、地域、用途、規模、構造のそれぞれに併せて基準が定められています。


一般的な規模の住宅では、これらの基準はその一部の適用を受けるのみですが、適用外の法令でもたとえば避難規定(避難経路を炎で塞がれたときのために、別方向の避難路も設けるなど)など、住宅にも参考にできるものがあります。


消防法では、火災発生を音でしらせる住宅用火災警報器(ホームセンターなどで売っている白い円盤状のものです)を新築の家、既に建っている家を問わず、すべての住宅への取り付けが義務化されています。


日本住宅性能表示基準ではこれらのほかに、火災警報器の設置数について、消防法を上回る基準(※)を設けて等級を定め、3階からの脱出対策についても、基準と等級が定められていています。


※消防法には台所への設置義務はありません

 
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これまでの火災の歴史を経て、整備された各種法令と基準は、先人の経験と防災への願いが詰まった、活かすべき財産です。それらを鑑みて、では自分に何ができるのだろうと考えたことを記して、この回のまとめにします。2つあります。


(1)「まずは法令を遵守すること」


なんだそんなの当たり前だろと言われそうですが、けれど当たり前のことが当たり前にできていれば耐震偽装もメルトダウンも起こらなかったわけで、実地では、ここが大切なスタートラインなのだと思います。


(2)「複数の要素を単純なひとつのかたちとして練り上げること」


たとえば平面計画のときに、玄関〜ホール〜リビングへと繋がるメインの動線と、水周りから勝手口〜サービスヤードに繋がるサブの動線を整理して分けることは、本来は使い勝手のためのものですが同時に避難経路を複数確保することにもなります。広めの収納スペースを設ければ余計な物が散らからずに済みますが、それが火元をあらかじめ取り去ることになったり避難経路を妨げない要因になるかもしれません。


そんなふうに、設計業務のなかで、ある課題と他の課題とが同時に解決できる道筋(というかアイディアというか)が現れて、それは設計があるレベルまで練りあがった指標のようなものだと理解しています。


狭小敷地での三階建て住宅の設計事例を振り返ってみても、例えば、


・避難動線をどう取るか?
・玄関位置はどこが適切か?
・駐車スペースは何台分、どちら側に開くか?


などが、同時に解けてゆくタイミングがあって、その道筋に共通するカギは何だったのだろうと考えると、それはおそらく、それぞれの問いが立ったときに、「よりシンプルに」なるような判断(選択)を積み重ねた結果であるようです。

 
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