渡辺浩二設計室 別館 

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バリアフリー


国民生活センターの資料によると、家のなかで発生する事故の主なものには、


・階段からの転落
・室内の床段差による転倒
・玄関の段差による転倒
・浴室での転倒、溺水



などがあるそうです。


バリアフリーとは、これらの事故を未然に防ぐための対策であると捉えると、本当に解消しなければならないバリア(障壁)とは、単純に物理的な段差だけでは済まされないのだなあとあらためて思います。

 

日本住宅性能表示基準のなかの「バリアフリー」の項目では、


・段差の解消
・階段の寸法、仕様の提示
・手摺の設置
・通路、開口部の幅、トイレや浴室、寝室の最低寸法の提示


の各項目により、5等級に分かれた仕様が定められています。この仕様が住宅金融支援機構のフラット35の融資基準や各自治体の改修工事などの助成金支給の基準にもなっています。

 

室内での転倒防止には、和室部分は段差のない設計として、玄関や階段など、やむを得ない部分には手摺などを設けましょう。階段での事故件数をこまかく調べると、下りの事故件数は上りの際の4倍になっています。階段の手摺を片面だけに取り付ける場合は、下りの際の利き手側に取り付けましょう。


次に触れる項目は特に、どこそこで定められた仕様、というものではありませんが、住宅の安全性についての重要なデータと提言です。それは医療分野からの、いわゆる「ヒートショック」についてのものです。

 

「浴室内での溺水」のうち、浴槽内への転落事故を除くと、その原因は虚血性心疾患による入浴中のもので、国立保健医療科学院の2001年の調査資料によると、亡くなられた方の数は、年間で推計1万4千人となっています。


冬季に居間〜脱衣室〜浴室(または寝室〜トイレ)など、一般的には気温差が大きいとされる部分では、入浴やトイレに行く際に身体が冷やされ(入浴時には再度あたためられ)、血圧の急激な上昇と低下を招き、血圧の急激な上昇は心筋梗塞や脳梗塞を引き起こし、血圧の低下は意識障害を招くなど、ともに重大な事故につながる原因となるようです。


ヒートショックに対して、建築分野からおこなえる対策とは、各室の室温差を極力小さくすること、すなわち「室内温熱環境のバリアフリー化」がその主なものです。
以前の記事(「夏涼しく冬あたたかい家 6/6)でも触れましたが、温熱環境のバリアフリー化対策には主にふたつの考え方があって、全館暖房と室内各所への暖房設備の個別配置がありますが、その大前提はしっかりとした気密断熱です。
 

家の中の障壁(バリア)は、できるかぎり取り除いて、しかもデザイン的には「取ってつけた」ようにはならないない、機能と意匠とが両立しているものが理想です。
それともうひとつ付け加えるならば、そのような取り除くべきバリアとは別に、住宅には、たとえば屋根や外壁など、暑さ寒さから人を護るために「必要なバリア」も存在します。


次回は、護るためのバリアのひとつである、「防犯性能」について書きます。

 
| 5:バリアフリー 防犯 改修 | 10:00 | - | - | pookmark |
防犯について

          


家に求められる機能のひとつに、雨や風や雷などの自然の環境から身をまもる、たとえるならシェルターのような機能があります。


はるか遠い昔に私たちの祖先は高い木の上での暮らしから、環境の変化で森が減ってやむなく地上に降りて生活をはじめたのだそうで、そのころ住まいのまわりにはトラやライオンやオオカミなどの肉食獣がうろついて、絶えず身の危険にさらされていたそうです。

 

現在では、もちろん家のまわりを肉食獣がうろつくことはありませんし、私が幼い頃には(田舎だったからかもしれませんが)、戸締りについての意識はあまりなかったようです。


が、現在では防犯の意識はもはや必須で、弊社のある境港、そして鳥取県は都会に比べればのんびりしたイメージで、窃盗などにも縁がなさそうですが、いやいや、しらべてみるとそうでもありませんでした。


鳥取県警さんの資料によると、鳥取県内の平成22年の住宅対象の侵入窃盗(空き巣、忍び込み、居空き)は253件でした。侵入口の種類は玄関・窓・勝手口・ベランダなどさまざまですが、侵入方法についてはその8割以上が 「施錠されていないところからの侵入」 となっています。うーむ。

 

建築基準法には防犯に関して、特に規定はありませんが日本住宅性能表示基準には防犯性能の項目が定められています。開口部の大きさと位置によって侵入可能な開口部を選定して、ガラスや錠や面格子などの対策を講じていることが性能表示の基準となっています。


しかし、住宅への侵入の8割以上が施錠されていない窓やドアなどからならば、施錠されたかどうか、モニターなどでチェックできる仕組みがあればいいのにと思って調べてみたら、民間セキュリティ会社さん に、そうしたシステムがあるようです。

 

ゆくゆくは携帯電話機からの操作で、その家の戸締りのすべてが可能になったりするのかもしれません。過剰な動力や機械や物性に頼る家づくりの考え方は、正直なところあまり好きではありませんが、ハンディキャップやヒューマンエラーを補ってくれるような技術の進歩には諸手をあげて大賛成です。


家づくりにおける、建物の仕様に関することがらについて、ここまで記してきました。次回は、工事種別が新築ではない場合、リフォームやリノベーションなどの改修工事について、その特徴を整理します。

 
| 5:バリアフリー 防犯 改修 | 09:00 | - | - | pookmark |
改修工事(リフォーム、リノベーション)とは?


リノベーションやリフォームなど、改修工事について、このところよく話題にあがる素朴な疑問や、その特徴など、6つの項目にまとめました。


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【1:リフォームとリノベーションとは、なにが違うのか?】



ウィキペディア によると、


<リフォームは「老朽化した建物を建築当初の性能に戻すこと」を指し、・・・・・一方リノベーションは、修復だけでなく「用途や機能を変更して性能を向上させたり価値を高めたりする」行為も含むため、より良く作り替えるという目的が含まれている。工事の規模も、間取りの変更を伴うような大規模なものを指すことが多い>


のだそうです。


大掴みにいえば、


・衛生機器の交換や内装の張替えならば 「リフォーム」
・間取りや用途、動線の変更を伴うものならば 「リノベーション」



ぐらいの使い分けで、個人的には業務にあたっています。
(法令による、明確な定義はありません)



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【2:「ホームインスペクター」とは?】


この言葉、恥ずかしながらお客様に教えていただきました。

住宅新報によると、


ホームインスペクターとは、


ホーム(home=住宅)の
インスペクター(inspector=調査官、検査官、査察官、監督官)


のことで、 「第三者的な立場で住宅診断をおこなう人」の名称です。調べてみるとどうやら、民間の資格認定もあるようですが、既存住宅の「インスペクション」に関しては、
国土交通省によるガイドラインが定められています。


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【3:他に「住宅診断ができる」ひと は?】



実務経験をもち、現場に精通した建築士が最適であろうと思いますが、上記ホームインスペクターさんについても、認定を受けてかつ、建築士である方もいらっしゃるようです。


耐震診断、設計および耐震改修工事の括りで言えば、現在、鳥取県や島根県など各県単位での資格者の登録制度もありますから、その登録者であるかどうかも、目安のひとつになるのかもしれません。


※参考:
  「鳥取県木造住宅耐震化業者登録」の制度について


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【4:新築工事と比較した改修工事(共通するところ)】



次の記事、「コストから逆算したプランニング」 にて詳しく記しますが、その建物のコストは、


・材料の量と
・作業(施工)の量



つまり、当該部分の表面積に正比例します。


これは新築工事にも改修(リフォーム・リノベーション)工事にも同じことがあてはまります。


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【5:新築工事と比較した改修工事(工事費が異なるところ)】


改修工事は、建物を部分的に撤去解体してから施工するので、


イ:解体工事をおこなう表面積
ロ:補修工事のボリューム
ハ:解体後の既存部分の表面積
ニ:新設部分の表面積



の4点に、建設コストは正比例します。



改修工事が、イメージよりも割安ではないといわれるのは、新築工事には発生しない、改修工事特有の工種である、


「イ:解体工事(と産廃処分費)」
「ロ:補修工事」



が、どのくらい必要であるかということを掴みづらい(故に「盛り」がちになる)からです。



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【6:「盛らない」ようにするには?】


以前設計した民家の改修(リノベーション)工事で、状態の良い土壁部分をそのまま残して断熱材として扱い(気密工事は実施)、土壁の解体処分費と断熱工事費を同時に削減する計画としたことがあります。


コストアップの要因とは、やりようによっては、それ自体がコストダウンの「産みの母」になり得る  のだなと実感したのですが、なんとかそこまでたどりつけたのは、


・実測ができて現況図がひととおり揃い、
・そこをベースに検討を重ねることができたこと


が、内容の把握とクライアント様、職人さん、設計者の情報共有を呼び込んで、


初期段階では不確定要素にしか見えなかったことがらが、具体的な減額要素へと変化していったからだと思っています。


最近の改修事例を通して再確認できたのですが、このことは、計画の規模の大小を問わないようです。そしてこの考え方は、新築工事にもそのまま当てはまります。

 

| 5:バリアフリー 防犯 改修 | 08:00 | - | - | pookmark |